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映画「ホビット」と「トラ!トラ!トラ!」と


映画『ホビット』ピーター・ジャクソン ビデオブログ#5

映画「ロード・オブ・リング」のピーター・ジャクソン監督最新作「ホビット」の
公開がもうすぐですね。

個人的には「ロード・オブ・リング」はあまり好きな映画ではありません。
三部作は全て見ていますが、さほど面白いと思わなかった。

ただ、映画の興行収入をみると「ロード・オブ・リング」は大成功をおさめたようで
ピーター・ジャクソン監督は母国ニュージーランドに自分のスタジオ「WETA」を
作るなど、映画監督として世界に認められた感じがあります。

私がニュージーランドにいた頃のピーター・ジャクソン監督の本国での評価は最低でした。
1991年から1992年の時です。

ニュージーランド出身の映画監督の「恥さらし者」と新聞の批評記事に書かれていたのを
覚えています。

それがです、「ロード・オブ・リング」という映画の大成功で、今や映画のロケ地に
ニュージーランド首相までが表敬訪問するまでに。

ピーター・ジャクソン監督による、映画「ホビット」の製作ビデオ日記は
なかなか興味深いものがありました。

ホビットたちが生活するロケ地は、スタッフが二年がかりで本格的なロケセット
(ちゃんとした材料を使用した)を組み、映画のロケのため、ニュージーランド中を
大型トラック約240台でロケをしてまわる映像は壮観の一言。

ここでふと思い出したのが、前回読んだ本「黒澤明 VS ハリウッド」でした。

ご存知のとおり、20世紀FOXが挑んだ戦争スペクタクル映画「トラ!トラ!トラ!」
の日本側の代表監督して選出された黒澤明監督でしたが、撮影中の相次ぐトラブルなどで
監督を途中降板させられるはめに・・・

前述したとおり、ピーター・ジャクソンの映画「ホビット」では、
2年もかけてスタッフがホビット族が住む村を作り上げた。

当時の黒澤明監督が手がけようとしていた「トラ!トラ!トラ!」では、
黒澤監督が満足いくセット、スタッフを集める事ができず、
その上、ものすごいプレッシャーからか毎晩深酒をして、酒が抜けきれない状態で
撮影現場に現れる黒澤明監督の異常とも言うべき言動もあり、
わずか8分間のシーンを撮影したのみで監督降板とはまるで対照的な出来事のように感じました。

当然、「ホビット」と「トラ!トラ!トラ!」では製作環境も異なれば、
状況もかなり違うので比較はできませんが、もし、当時の黒澤明監督に
今のピーター・ジャクソン級の権限とお金があったら、どんなに凄い映画を完成
させたのだろうと思ってしまいます。

黒澤明 VS ハリウッド」の中で書いてますが、「トラ!トラ!トラ!」の製作時に
自分がこの映画の総監督であると黒澤明自身が大きな誤解をしていたこと、
山本五十六に思い入れを強く入れ過ぎた結果、黒澤明自身がとてつもない重荷を
背負ってしまったことなどなど・・・

結論的に言えば、やはり映画は精神的、金銭的な余裕がある程度ないと製作できない
ものなのかもしれません。

特にスケールの大きい作品になればなるほど、監督一人ではコントロールできなく
なるのは当然。

しかし、強運の持ち主、黒澤明監督は監督降板、自殺未遂などのトラブルをはねのけて、
その後、「影武者」「乱」などのスケールの大きい時代劇を手がけています。

その時、黒澤明を支えたのは大勢の黒澤組のスタッフと、映画「ゴジラ」を手がけた
本多猪四郎監督だった。

もし、「トラ!トラ!トラ!」の時も、本多猪四郎監督が黒澤明を支えていたら・・・・
などと勝手に想像してしまいます。