STUDIO F+のPhoto Blog

デジタル映像スタジオSTUDIO F+の写真専門ブログです

BiRDMAN or The Unexpected virtue of ignorance

イメージ 1

「バベル」のメキシコ出身監督、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが手がけた
アカデミー賞受賞作「BiRDMAN or The Unexpected virtue of ignorance」を観てきました。

内容はすでに話題となっているので省略しますが、アントニオ・サンチェスが激しく奏でる
ドラムのリズムに合わせて、落ち目の俳優のウソと本当の姿を描き出しつつ、
現在のハリウッド映画を徹底的に皮肉ったあげく、NYのブロードウェイの裏側を映し出す
という、映画業界人、演劇人、必見の映画となっていました。

マイケル・キートン曰く、今回演じた落ち目のハリウッドスター、リーガン・トムソンは
「これまでのどの自分にも当てはまらない役だ」と語っているようで、
「バードマン」=「バットマン」という似通った設定は、あくまでも演出陣が意図的に
創りだした虚構でしかいないようだ。

CGで彩られたVFX全盛期のハリウッド映画の中において、生身の役者がアクターとして
演じることがいかに大変であり、いかに凄いことなのかを、この映画は全編を通じて
描いてみせてくれる。

そう、現在では役者までもがCG化されて、あたかも本人のように演じてみせる時代
なのである。その中において、人間くさい人間を人間の役者が演じることがいかに
貴重なことか。

アレハンドロ監督のカメラは、シーンに登場している役者2人に対して、
かなりカメラを近づけた(寄った)構図で見せつける。
それはほぼバストショットか、それよりも近いアップで映し出す。
そのため、画面は役者が演じている演技で埋め尽くされ、窮屈な画のようにも見えるのだが
観客は役者の芝居以外、目にすることができないようになっている。

(ココからネタバレ)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この映画の最大のオチは、あのラストシーン。

よくよく思い出してみると、ラストシーンに通じる、
オープニングにあった、空中浮遊しているリーガン・トムソンの後ろ姿である。

悩める落ち目の俳優、リーガン・トムソンは、実は、特殊能力を持ったホンモノの
バードマンだったというオチ。

スパイダーマンやらバットマンやら、アメコミ・スーパーヒーロー映画を散々バカに
しておきながら、ホンモノの特殊能力を持った男がいたというお話。

共演しているエドワード・ノートンも、「ハルク」でアメコミヒーローを演じ、
マイケル・キートンは「バットマン」、娘役のサムを演じたエマ・ストーン
「アメージングスパイダーマン」のヒロイン役なのだから、スーパーヒーロー映画に
出演している役者を集めて、アメコミスーパーヒーローをコケにするという
アレハンドロ監督の批判的精神は大したものである。

この映画は面白い?つまらない?と聞かれれば、私は面白かった派である。

アメリカVARIETY誌の批評家曰く、この映画は「Showbizの世界に精通した者による、
Showbiz自体を風刺した映画」とのこと。

ちなみに、この映画のハイライトシーンの一つである、リーガン・トムソンがパンツ
一丁でニューヨークの夜を疾走した後に、劇場に客席から入って
リーガンがお芝居を続けるというシーンがあるのだが、この客席にはホンモノの
マーティン・スコセッシ監督が座っていたというのだから、笑える。

本作品のトリビアは沢山あるのだが、最後にもう一つ。
オープニングのドラムに合わせてタイトル、スタッフの文字が出るシーンは、
フランス映画の巨匠、ジャン=リュック・ゴダール(御年83歳!)の映画、
勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」のオマージュだそうだ。

映画は単なる娯楽ではない、そう思える人がこの映画を好み、
映画はあくまでも娯楽の一部であると考える人には嫌われる傾向があるのかもしれない。

個人的には、全編を貫く激しいリズムを奏でるドラマー、アントニオ・サンチェスは、
お気に入りのパット・メセニーの右腕ドラマーだったりして、映像以外にも音でも
楽しめた作品でもあった。

それにしても・・・
メキシコ人監督の躍進が目覚ましい、アメリカ、ハリウッド映画界ではありますね。

それ故に、本作は生粋のアメリカ人には、まず生まれてこない発想のような気がしました。

イメージ 2

六本木の東宝シネマズには等身大のバードマンが立っていました

STUDIO F+公式HP