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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件4K版をキネマ旬報シアターで観る


牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件4K版をキネマ旬報シアターにて鑑賞してきました。
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特別料金2200円!という入場料を払ってでも観ようと思ったのは、
実は、今から10年も前の2007年、私が日芸の大学院博士後期修了作品として
製作をしたドキュメンタリー映画「映画館物語2007〜2008」の撮影をしていた時まで
さかのぼります。

当時、私は重いSONYHDVカメラと三脚を持ってミニシアターやシネコンの支配人の
インタビューをひとりで撮影してまわっていました。

インタビューを快く承諾していただいた映画館の支配人のひとりに
東中野にあるポレポレ東中野の支配人さんがいました。
その支配人さんに、今まで観た映画で一番印象に残っている映画は?と
質問した時に出た映画のタイトルが、牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件でした。

「すごく長い映画なんですけど、この映画は凄かったんですよ。
エドワード・ヤン監督が手がけた映画なんですけどね」と、
ポレポレ東中野の支配人さんは語ってくれたのでした。

私はカメラをまわしながら、その横でインタビューをしていたので、
「え?何というタイトルでしたっけ?」と二度ほど聞き直したのを覚えています。
「クーリンチェ、クーリンチェ少年殺人事件ですね」と。

それから10年が過ぎ、4Kデジタルシネマとして蘇った、
牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件。

千葉の柏駅そばにあるキネマ旬報シアターには、20人ほどのお客がいたでしょうか。
16:05上映開始の終了が20:05なので、ほぼ4時間の上映時間!!
3時間56分(236分)の完全版。
過去に上映されたのは188分版というのがあるらしい。

ポレポレ東中野の支配人さんが観たのは236分版だったとのこと。
私が観た映画の尺の中で、ダントツ一番長い映画でした。
あの黒澤明監督の「七人の侍」ですら207分でインターミッション(途中休憩つき)
だったので、牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件はインターミッションなしの
ぶっちぎり4時間上映だったのです。

トイレが近い私にとって、果たして途中席を立たずに映画を鑑賞できるかどうか?
不安が頭をよぎったのですが、この映画を観た多くの人が語っているとおりでした。
アッという間の4時間でした。

すでに他界されたエドワード・ヤン監督ですが、その手腕たるやさすがに
後世まで名を残しているだけはありますね。

映画の詳しい内容、解説はすでにたくさんの記事があるので、
ここでは書きません。

ただ、
一人の女性に振り回される男たちの運命とともに、
当時の台湾という国の政治的な背景が合間って、映画全編にわたって醸し出される
不安定・不気味な状況が、4時間ずーっと貫かれているという。

個人的には、ラストシーンを観て感じたのは、ゴダールの「勝手にしやがれ」の
ラストとの比較でした。
ご存知のとおり、「勝手にしやがれ」ではヒロイン、パトリシアは生き残るかわりに、
主人公のミシェルは警察に撃たれてしまいます。
しかし、牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件では、主人公の「小四」が恋敵ではなく、
ヒロインの「小明」を刺して殺してしまうという結末に。

「小四」の父が諭すように話すシーンが印象的で、「女っていうのは厄介なものだ」と
「小四」が「どうして?」と聞き返すと、父が「大人になればわかる」とだけ話します。

あるインタビュー記事でヤン監督が、この映画を作る前に書き上げたプロットは
約300話分のドラマになるくらいの分量があるらしいのですが、
確かに、実際に台湾で起きた殺人事件をもとにした、少年と少女、そしてその家族の
悲劇の物語としてテレビドラマになるような気がしました。

最後に、個人的には主人公「小四」の表情もいいのですが、横顔がどことなく
西洋人のように垢抜けていた「小馬」演じた譚志剛(タン・チーガン)の
印象が深く残りました。

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パンフレットによると、譚志剛(タン・チーガン)は残念ながら18歳という若さで
この世を去ったとのこと。彼のキラキラした演技は、自分の運命を知っていたかのように
眩しいものでした。

海外ではすでに英語版タイトル”A Brighter Summer Day”としてブルーレイ化
されているので、日本語字幕付きブルーレイも発売して欲しいものです。

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