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映画評:『穴』Le Trou

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フランス映画の巨匠、ジャック・ベッケルJacques Becker監督作品『穴』(1960年)を観ました。

脱獄モノ映画として名作と讃えられるこの作品。

実にリアリティがあって面白かったです。

それもそのはず、この映画は1947年に実際に起きた脱獄事件を描いた作品であり、
この事件の実行犯の一人であるジョゼ・ジョヴァンニが1958年に発表した小説が原作となっているから
なんです。

しかも、登場人物の一人で脱獄犯のリーダー、ロランを演じる、ジャン・ケロディはホンモノの脱獄犯!

オープニングに車のエンジンをいじりながら登場してくる彼こそ、ジャン・ケロディご本人。

確かに、劇中、一番凄みがあり、リアリティあふれる演技をしてるのがジャン・ケロディだったので、
並みの役者じゃないと思っていました。

彼は役者じゃなくモノホン!の脱獄犯だったとは…

これだけ書き綴っただけでも、ジャック・ベッケル監督の手腕たるやスゴイものがあります。

『穴』がただの脱獄映画ではない別の理由としては、
コンクリートに穴を開ける行程やら、鉄格子を切り取るまでの過程が、
映画の時間を利用したトリックだけでなく、本当に「穴」が貫通するまでを丁寧に描ききっている点にあります。

いったい、どうやって撮影したのか?

ガンガンとコンクリをお手製の金属片で叩く、叩く!それは凄まじいシーンでした。

個人的にお気に入りのシーンは、鉄格子の張り巡らせた面会室でのシーン。

ガスパールという若者が、面会に来た義理の妹と会い見つめ合うシーンなんですが、カメラのフォーカスが見事なんです。美しいんですね、とても。

これも、カメラマンがあのアラン・レネ監督の名作『夜と霧』を撮影した、ベルギー出身の名カメラマン、ギスラン・クロケの手によるものだと言うから納得です。

ラストはアッと驚く結末がまっていたりと、ただの映画ではないフランス映画の傑作『穴』。

残念ながら、この作品がジャック・ベッケル監督の遺作となったわけですが、
是非、一度観て欲しい作品です。