STUDIO F+のPhoto Blog

デジタル映像スタジオSTUDIO F+の写真専門ブログです

再掲載書評「メイキング・オブ・ピクサー」その2

以前、大ヒットCGアニメを連発させる制作スタジオ、ピクサーについて書かれた本の感想を書きましたが、今回はその続きです。

なぜ、ピクサーはあれだけのヒット作を連発することができたのか?

また、なぜ日本はアニメ先進国と言われながら、長い間フルCGアニメを量産出来なかったのか?

まずは、1番目の疑問、ピクサーの強さのヒミツについては、この本の中に書かれてある事を要約すると、ディズニーからの伝統を受け継いだ徹底した制作システムがある事だそうです。皮肉な話、ピクサーを牽引しているジョン・ラセター監督は一時期ディズニースタジオを辞めさせられた事があるんです。

金儲けにひた走っていたディズニーは次第に本来のディズニーの伝統が失われていきました。しかし、それを大切に受け継いだのがピクサーだったのです。

ディズニーの伝統、それは徹底したリアリズムの追求と、ストーリー重視の姿勢です。ピクサーに集まったアーチストたちは、妥協せず、CGを使った新しい表現方法を追求していきました。作品によっては、ストーリーにまる一年かけて練り上げるというのだから、予算のない日本映画とは比較になりません。

次に日本でこれまで本格的なフルCG映画作品が少なかった理由、その一つとして挙げられるのが、いわゆる「ファイナルファンタジー・ショック」と呼ばれるものです。

実際にCGアーチスト&監督に話を聞いたのですが、あの大失敗作と言われた日本初の超大作フルCGアニメ「ファイナルファンタジー」が、興行的に失敗したため、スポンサーやら、配給会社やらが一気にフルCGアニメには手を出さなくなったという事が原因の一つだそうです。

もちろん日本のアニメにはCG技術を取り入れた作品は沢山あります。あの「もののけ姫」しかり、「アップルシード」しかりです。

ただし、フルCGアニメの映画となると、同じく大失敗したジブリの「となりの山田くん」ぐらいで、ファイナルファンタジー以降、すっかり陰を潜めてしまいます。

最近になり、フジテレビが制作したフルCGアニメ「ホッタラケの島」が出てきましたが、果たして日本におけるフルCGアニメの起爆剤になるのかは疑問です。

当然の事ながら、アメリカと日本という国民性の違いもあるでしょう。アメリカでは今も量産されているフルCGアニメはソコソコお客が入っているようですが、日本ではよほど面白い作品か、キャラクターに魅力がない限り、アメリカ製フルCGアニメ映画にはお客が入っていないという現実があります。

内容のクオリティはともかく、宮崎駿監督みたく、手書きにこだわった「崖の上のポニョ」のような作品が制作されているのが日本アニメの特徴の一つだと思いますし、「エヴァンゲリヲン」のような日本アニメ独特のキャラを生み出す力があるのも日本ならではだと思います。

もろ手を上げてピクサーのフルCGアニメを絶賛はしませんが、映画制作にかける手間隙を惜しまない姿勢は、日本でも同じながら、やはりスケールと予算の規模の面ではまだまだかなわないなぁ、と感じさせられたのでした。