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映画評『マイケル・ムーアのキャピタリズム』

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マイケル・ムーア監督と言えば、「ボーリング・フォー・コロンバイン」でアカデミー賞を受賞した
監督であり、ドキュメンタリー映画として記録的な観客動員数を残したことでも有名です。

従来のドキュメンタリー映画と言えば、教育映画的な要素が強い印象があったのですが、
マイケル・ムーア監督作品はドキュメンタリー映画をある種のエンターテイメント映画として
見せることに成功したように思えます。

その証拠に、マイケル・ムーア監督が製作するドキュメンタリー映画には、ブラックジョークや
ユーモアが必ず入っており、ただ単に自分の主張をするだけではなく、観客に問題提示と同時に
深刻になりすぎない程度のエンターテイメント性が導入されています。

映画評論家からは「マイケル・ムーアの映画はドキュメンタリーではない」とか、
「内容が偏りすぎている」という指摘もあります。確かにそうかもしれませんね。
しかし、政治に対抗する手段としてのドキュメンタリー映画を撮り続ける、マイケル・ムーア
監督のスタンスは、評価されていいと私は思います。

今回観た「キャピタリズム」は、まさにあの「リーマンショック」以後のアメリカ社会で何が
起きているのか?を描いた問題作でした。

キャピタリズム」いわゆる「資本主義」と訳されるわけですが、この映画の中で面白かったのが
アメリカ人が「民主主義」と「資本主義」の違いを説明していた部分でした。

アメリカは狂ったように「社会主義」「共産主義」を叩き、悪魔のごとく批判を続けて
いますが、アメリカが推し進めてきた「資本主義」自体、問題を抱えているわけで
このままアメリカ主導の経済システムが長続きするとは思えません。

サブプライムローンを制定したブッシュ政権の時、私はまだアメリカに住んでいました。
誰でも家が持てる。これこそが多くのアメリカ人にとって夢を与えるものだと、
サブプライムローンの素晴らしさだけが強調されたTVのCMが流れていましたね。

あのフロリダで問題になったブッシュ対アル・ゴアの大統領選挙の再集計の時も
アメリカにいて、アメリカのTVは連日、ブッシュが勝つのか?ゴアが勝つのか?と報道
していたのを覚えています。

アラスカ大学の友人は、「ブッシュなんかに勝たせてはダメだ」と話してくれました。
しかし・・
結果としてゴアは負け、ブッシュが大統領になり、イラクと戦争をし、サブプライムローン
アメリカじゅうにバラマキ、その結果「リーマンショック」という深刻な経済危機を招いた
わけです。

まだアメリカ経済が破綻する前、アメリカに住んでいる日本人が私に「今のアメリカの好景気は
バブルだから、いずれ必ず破綻するよ」と言っていました。

それから3年後、実際にアメリカ経済は破綻し、アメリカだけでなく日本やヨーロッパ、世界を
巻き込んで深刻な経済危機が起きたのでした。

マイケル・ムーアは映画の最後に、アメリカ国民の税金700億ドルを破綻した銀行に投入し
再生させたにも関わらず、家を奪われ、仕事を奪われた貧しい人にはなんら助けを与えなかった
事に怒りをあらわにしていました。

事実、この税金の投入をして銀行破綻の危機を乗り越えたモデルケースは、日本の公的資金投入
でした。(当時の日本の政治家は、アメリカに対し日本が行ったこのやり方を自慢気に
推薦していました)

はたして、その日本はどうなったのかというと、借金大国になり、いまだに景気を回復する
糸口さえ見いだしていない現実があります。

ある経済学者は「アメリカの「資本主義」は長続きするシステムではなく、長い目で見た時の
「過程」でしかない。」と話していました。

「資本主義」では必ずまた行き詰まる。これに代わる何か新しいシステムが生まれない限り
バブル、そして破綻という経済の流れを変える事はできないのかもしれません。