『恐怖の報酬』のアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督が1956年に製作した
絵画制作の裏側を見せてくれる貴重なドキュメンタリー映画でした。
白いキャンバスに映しだして見せている点でした。
(反対側にも絵の具が透けて見えるもの)を用意して、ピカソが動かしていく絵筆の動きを
直接撮影することに成功したことによるものです。
まるでアニメーションを見ているかのように、ピカソの絵筆が動き、線から段々と形を作り、
抽象的な形から人物や動物、または椅子、ベッドといった具体的な形に変わっていきます。
しかも、ピカソの絵筆は人物の顔を書いたかと思うと、次には脚線を描き、そして胸を描き・・
といった感じで、的確な絵筆さばきを見せてくれます。
そして色をつける段階に入ると、豪快に色を塗りたくっていくのです。
監督と会話を交わして、再び絵筆をとって絵を描きはじめるというシーンが印象深く、
普段アトリエでのやり方で絵を描こうと、ピカソが自ら大きなキャンバスに絵を描き、
色を塗っては消し、その上からまた新しい絵を描き、また色を塗っては消しを繰り返します。
そして、ピカソがひとこと「だんだんヒドくなってきたな」と言いつつ、「描きたいものが
見えてきた」と言ったとたん、一気に新しい方向性を掴んだかのごとく、抽象的な絵画が完成
していくシーンは圧巻。
フランスではこのドキュメンタリー映画が国宝扱いされているとの事。
それもそのはず、このドキュメンタリー映画でピカソが描いた絵画は、撮影終了後に全て
破棄されたとか(真偽はわかりませんが・・・)。
つまり、この映画でしか見ることができないピカソの絵画が、フィルム上に記録されている
というわけなのです。
「天才画家」ピカソが動き、語り、そして、彼自身が絵画を描く姿を見るだけでも
芸術家のひらめきに触れる事ができる貴重なドキュメンタリー映画だと思います。
レンタルDVDはないようなので(過去にVHSではレンタルされていたようですが)、
なかなか見る機会がないかもしれませんが、チャンスがあれば是非!