STUDIO F+のPhoto Blog

デジタル映像スタジオSTUDIO F+の写真専門ブログです

(ドキュメンタリー)さようなら全てのエヴァンゲリオン 庵野秀明の1214日

放送され話題を呼んだNHKプロフェッショナル
仕事の流儀 庵野秀明スペシャ

その映像に新たな映像やインタビューを加え
再編集した100分の拡大版
「さようなら全てのエヴァンゲリオン
庵野秀明の1214日」がAmazonプライム・ビデオに

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Amazonプライム・ビデオより

すでに
NHKプロフェッショナル版を観ていたのですが
今回初めて100分版をアマゾンで視聴しました

観ていて気がついたのは
追加されたシーンと完全に削除されたシーンがあること

版権の都合上か「鉄人28号」をよく観ていたという
セリフ、シーンはすべてカットされ

逆に長めに追加されていたのが
シン・エヴァンゲリオン劇場版制作に
使用された立体模型の見学シーン

庵野秀明監督自ら何度も模型の位置を動かし
本人が納得するまで確認し続けるという

また
いよいよ締め切りが間に合わないとなり
庵野監督自ら作画監督をしているシーンは
プロフェッショナルでは放送されなかった部分

インタビューシーンもカットされたものが
あるものの

超時空要塞マクロス」で板野サーカスとして
名を馳せた板野一郎氏のインタビューが追加され

スタジオジブリ宮崎駿監督のセリフ
「あとは、一緒に仕事をやらないことが大事なんです。
ケンカになるに決まってるんだから。
自分の方がいいと思うんだから絶対両方とも」
という意味深いセリフが追加されてました

個人的に削除された庵野秀明氏のセリフで
残念だなぁと思ったセリフがあります

プロフェッショナル版ではハッキリ言ってるんですが
何か放映後に問題があったのか?
カラー側から削除要請があったのか?
よくはわかりませんが

削除されたセリフの中で
私が一番好きな庵野秀明監督のセリフ

庵野「アングルと編集がよければ
アニメーションって止めでも大丈夫。
動く必要もない」

Q「それはアニメーションに限ってですか?」

庵野「いや、実写でも役者がどんなにアジャパーでも
アングルと編集がよければ、それなりに面白くなるよ」

このセリフはまるまるカットされてましたね
残念

庵野氏がよく使う「アングル」という言葉
もともと英語のAngleから来ており
角度、視点などの意味が

カメラを使用して使う場合は
「ものを見る角度(視点)」として
使われます

私がふと庵野氏の「アングル」で気がついたのは
アニメーションでいう「レイアウト」という言葉

英語のLayoutの意味は配置、配列のこと

かつて雑誌「美術手帖」2008年9月号に
スタジオジブリのレイアウト術」
という特集記事が掲載された事があります

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美術手帖2008年9月号より

 

この中で
「レイアウトとはアニメーション制作において
その設計図となる絵コンテをもとに
より詳細なキャラクターの動きや背景との位置関係
カメラワークなどを描き込んだ鉛筆画のことをいう」
とありました

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美術手帖2008年9月号より

 

 

庵野氏の言う「アングル」とは「レイアウト」の
事に近いものではないかと考えたのです

アニメーションであろうと実写だろうと
カメラがとらえる四角い枠のエリア内に
収まらなければならないという制約が
初めから付きまとっています

その四角い枠の中で、いかにして
キャラクターを動かし、感情を表し
その様子を客観的に見ている視聴者に
作者が伝えたい「物語」や「テーマ」を
届けるのか

それが演出家や映画監督と言われる人たちの
「仕事」なわけで

カメラの四角いエリア外で起こっている出来事は
残念ながら視聴者に伝えることができない

カメラのフォーカスが合っていないものは
ボケた映像としてしか残らないという

ある意味制約だらけの芸術作品が
映画だったりアニメーションだと言えます

その四角い枠の制約の中で
いかにして面白く、人の感情を揺さぶる
映像作品として視聴者、観客に伝えるのか
これが映画監督、映像作家、演出家の
腕の見せ所なのだと思います

それゆえか
映像作品を世界的なビジネスとして
長年成功をおさめているアメリカ映画は
まるでテンプレートのような
お決まりのパターンとして
悲しみのシーンには必ず雨が降り
ラブシーンには温かみのある色味を使い
などなど

四角い枠(フレーム)の中に
色を変え、自然現象を再現させ、
さらには効果音、BGMを入れ
一つの映像作品として
観客に提供し続けているのです

アニメーションで言えば
宮崎駿監督には宮崎流の
お決まりの展開、パターンが
演出上あるように

庵野秀明監督の作品には
一貫されたアングル、レイアウトの
パターンが見受けられます

これはやはり
一人の人間の内面から出てくるものゆえ
限界があるのでしょう

それを知っているからこそ
庵野秀明監督はドキュメンタリーの中で
絵コンテをわざと作らせず
実写的な実験映像を撮影し
他の演出家にアイデアを出させ
自分以外の内面から出てくるものを
欲したのだと思います

しかしながら
最終的には庵野氏が全てを塗り替え
自分のカラーでまとめてしまった
それがエヴァンゲリオン最終版という
製品、プロダクトなんでしょう

私的に
このドキュメンタリーを観て
もう一つ残念に感じたのは
庵野氏が初期に書いた脚本を
書き直したという点

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Amazonプライム・ビデオより

人からお金を頂いて商売をする以上
仕方がないことなのかもしれませんが
映画作品に客観性を持たせるものとして
公開前に「試写会」と称して事前上映をし
映画の意見を集めるというやり方があります

今回の
シン・エヴァンゲリオン劇場版でも
庵野監督は自分の会社の株式会社カラーで
他のスタッフの意見を事前に聞き
脚本をすべて書きかえたという

初期の庵野案では「つまらない」「長い」
「くどい」などの批評があり
原作者である庵野氏が書いた内容が
理解されていない事実があったとのこと

そこで
庵野監督は時間ギリギリまで粘って
最終脚本を書き上げ
今回の作品の形に至ったという

100分版のドキュメンタリーで
2019年3月29日
カラーのプロデューサー杉谷勇気氏が
新しくなったDパートの脚本について
「分かりやすくしてくれていると思いました」とか
「僕とかは分かりやすい方がありがたいので」
といったコメントが映しだされていました

監督:前田真宏
「良い意味でみんながわかる終わり方。
普通っちゃ普通からもしれないけど
(中略)
庵野さんが)考えてきたことを突き抜けての
普通なので重みがあるというか
いい終わり方だと思っています」

庵野監督曰く
「面白いことをしたいだけだから」と

個人的には
最後の作品だからこそ
庵野秀明監督が思う存分
周りの意見なんて気にしない
とんでもない理解不能な最終版を
観たかったなぁと

なので残念

黒澤明監督と共同脚本を書いた
橋本忍氏が書き残した本
「私と黒澤明 複眼の映像」の中に
いかにして映画を脚本の段階で
客観性を持たせて面白い作品に仕上げるのか?
について書かれていましたが

 

 

 

庵野秀明監督の脚本は出来上がりを見せて
周りの意見を聞いた上で
脚本を書き直した

一般客の映画への理解は得られたものの
庵野監督が最後に言い残したかった映画には
ならかなったのではないか?

シン・エヴァンゲリオン劇場版は
100億円のヒットにはなったものの
庵野秀明氏のアート集大成作品には
ならなかった映画だと思います

最後に思い出されるのは
スターウォーズ」のジョージ・ルーカス
最後に手がけた「エピソード1〜3」です

 

 

脚本を手がけたジョージ・ルーカス
庵野監督は対照的におそらくではありますが
本人が書いた脚本そのままに映画製作をし
興行的に失敗し、多くのファンを失望させ
映画監督から退いた

しかしながら
ジョージ・ルーカスは自らの信念を
貫いたのではないかと思うのです

自分が「面白い」と思うものを描いて
失敗した
(決して本当の意味で失敗したわけではないですが)

庵野秀明監督も好き放題に作ればよかったのにと
誰も観たことがない世界を映像で見せて欲しかった
そんな勝手なことを思いながら
ドキュメンタリーを観ていたのでした

コロナ感染症がまだまだ続いています
皆様も気をつけてください

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