石井裕也監督作品「あぜ道のダンディ」を観ました。
石井監督作品はすべて観ている私ですが、今回の「あぜ道のダンディ」はつまんなかったですね・・・
若干29歳の石井監督の手に負える内容でなかったような気がします。
石井監督はこれまでの作品すべて、自身で脚本を書き、監督を手がけているわけなんですが、
29歳という若さで50代のおっさんの悩み事を描けるか?というと、やはり経験値が足りないように
思えます。
映画監督の年齢と、その人の演出力の相互関係は科学的根拠が示されているわけではないのですが。
監督が体験したことのない内容を描く場合は、あとは監督の空想(イマジネーション)と
リサーチによって得たものでしかないと思います。
前作の「川の底からこんにちは」あたりから、薄々感じていたことなんですが、
うーん、石井監督はかなり無理をして脚本を書き、演出をしているのでは?と。
ことがありました。
その時に、一度だけ、石井監督から書き上げたばかりの「ばけもの模様」の脚本をみせて
もらったことがあります。
(石井監督が「ぴあフィルムフェスティバル」でグランプリを取る前の話ですが)
私は石井監督の脚本を読まさせて頂き、メールで「女主人公に魅力がないと思います」と辛口の
批評を書いたメールを石井監督に送ったことを覚えています。
今考えれば恐れ多いことでしたが(笑)
この「ばけもの模様」の前に製作された「ガールスパークス」は面白かったのですが、
「ばけもの模様」あたりから、石井監督作品は年齢不相応な内容の脚本を手がけていっているような
気がしています。
つまり、「ガールスパークス」までの作品では、石井監督が描いていた登場人物はダメな高校生とか、
石井監督の経験値内でおさまる主人公だったわけで、「ばけもの模様」以降の主人公はどれも
「大人」ばかりなんです。(「君と歩こう」は除く)
しかも、石井監督作品の特徴の一つである、毎回作品に「石井監督的現代日本論」という独自の
視点から現代日本が抱える問題や課題を、さりげなく作品に入れているわけなんですが、
今回の「あぜ道のダンディ」では、それも裏目に出た感じがして、すべて「説教臭い」演出、
台詞まわしになっているなぁと感じました。
私は石井監督作品のファン。
今回、辛口の批評を書いたのは「あぜ道のダンディ」はもったいない作品に仕上がっているような
気がしたためです。もっと、石井監督が持つオフビートな笑いを混ぜた展開だったらなぁ・・・と
思いました。残念。