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NHK 平清盛の色味問題

以前、NHKが放送中の大河ドラマ平清盛」の映像を観た兵庫県知事が、「画面が汚い!」と発言した問題がありました。

この「画面」問題について、映像を研究している立場から簡単に検証してみたいと思います。

私はほとんどテレビドラマを観ないので、はっきりとは覚えてないのですが、NHK大河ドラマ龍馬伝」を少し観た時に、あれ?何時の間にかNHKも画面の色味をかなり意図的にいじっているなぁと、感じた事がありました。

それ以前の大河ドラマでは、そこまで色味を操作していなかったように思います。

なぜ色味を操作する必要があるのか?というと、時代はハイビジョン画質が当たり前になり、撮影機材もHDカメラでの撮影が普通になっているため、HDという高画質の映像だと、何もかもがハッキリ、くっきり写ってしまうからなんです。

そこで、一番の問題が女優さんのアップ。

シワやシミまでもが、ハッキリ、くっきり写り込んでしまうため、わざわざフィルターを使用したり、編集時にデジタルインターミディエイトで、色味を調整する必要がでてきてしまったのです。

これは、映画の世界ではある意味当たり前に行われてきた手法で、典型的なのが俗に言う「ハリウッド・マジック」で、女優さんには何らかのフィルターがあてられ、美しく見せるのが普通だったわけです。

ところが、今度はテレビまでも画像のクォリティーを気にしないといけなくなってしまった。

平清盛というドラマは時代劇です。
現代劇とは違う、わざと古びた色調にして、ドラマの世界観を作りあげようとしている意図がわかります。

韓国の歴史ドラマなどでは、一部を除いて、色味をさほど操作せずに放送しているものもありますが、それはそれで演出する側の意図なのかもしれません。

兵庫県知事の発言は、映像屋からみると映像を知らない素人的な発言なわけで、色味がキレイだけでは成立しない演出もあることを知った方がいいのかもしれません。

かつて、デジタルビデオカメラにフィルムの色調を導入し、パナソニックのビデオカメラ開発に携わってきた、名カメラマンの阪本善尚先生に日芸大学院時代にお話を聞かせて頂いた事があります。

阪本善尚先生は、日本においてデジタルビデオカメラを初めて商業映画の撮影に導入した人物であり、「水の旅人」や「男たちのヤマト」などを手がけている大ベテラン。

その阪本先生曰く、「デジタルで撮影したものは、あとでデジタルインターミディエイトの過程で色味を操作できるようになった。ビデオしていた色味が、フィルムの持っていた色調に近づけることができるようになったんです」と。

映像屋、いや、映画屋が目指す画質は、あくまでもフィルムの画質なんだなぁと、改めて感じました。

平清盛の色味問題ですが、最終的には演出家の判断に任せるべきだと思います。

今の日本では、テレビドラマも映画も同じだという風潮になってしまいましたが(これはテレビドラマのザ・ムービー化がかなり影響していると思います)、実はテレビと映画はライティングひとつとっても、まるで違うものだったんです。

悲しいかな、日本の映画産業を支えているのがテレビ局なため、本来持っていた日本の高い映画技術は一部を除いて継承されずに消えていってしまっているような気がします。

たかが色味、されど色味。
テレビではなく、日本映画産業に頑張ってもらいたい、そう感じています。