STUDIO F+のPhoto Blog

デジタル映像スタジオSTUDIO F+の写真専門ブログです

映画「ピアニスト」

イメージ 1


問題作「ファニーゲーム」のミヒャエル・ハネケ監督作品「ピアニスト」を観ました。

主演に、「8人の女たち」のユザベル・ユペール。
原作はオーストリアの小説家エルフリーデ・イェリネクの1983年の同名小説。

この映画「ピアニスト」は2001年のカンヌ国際映画祭審査員グランプリ、男優賞、女優賞を
受賞した作品。

超後味が悪い映画「ファニーゲーム」を見終わった後に、ミヒャエル・ハネケ監督作はもう
観ることがないだろうと思っていたのですが、ミヒャエル・ハネケ監督のフィルモグラフィー
検索したら、なんとこの監督は映画賞を取りまくっている人物だということを知ることに。

そんなわけはないだろうと、とりあえず興味本位でミヒャエル・ハネケ作品で有名なものから
観ていくことしてみました。

その中の一本が、この「ピアニスト」。

ミヒャエル・ハネケ監督作品のキャッチフレーズで多いのが「衝撃的なラスト」という言葉
なんですが、確かにこの「ピアニスト」にも「衝撃的なラスト」が待っていました。

「衝撃」と言うと、かなりオーバーな表現なんですが、なぜ主人公の女性はあのような行動を
とったのか? 見終わった最後まであとを引く仕掛けなんです。

「仕掛け」と言ったのは、ミヒャエル・ハネケ作品に共通して「観客に全てを観せない」
「観客に考えさせる映画」と、一貫する演出方法(仕掛け)があるように思えるからです。

私が「ピアニスト」を観て思ったのは、昨年度のアカデミー賞作「ブラック・スワン」との
共通点でした。

ブラック・スワン」には母親の強すぎる母性に翻弄され、精神的に歪んでいくヒロインが出て
きましたが、この「ピアニスト」は精神的に歪んでいるのではなく、性的に歪んでいるヒロインが
登場するのです。

どのように「性的」に歪んでいるのかは、観てのお楽しみ?!として、よくもまぁ、女優さんに
こんな演技を要求したもんだ!と感心してしまいました。

やはり、ミヒャエル・ハネケ監督はタダモノではない。
いや、むしろ確信犯的にやっている、危ないオッサンのような気がします(笑)

「ピアニスト」のヒロインを演じるユザベル・ユペールの演技も凄ければ、わざとだと思う
のですが、オバサン風なメイクを惜しげも無く見せつけているところもスゴイ。

8人の女たち」(フランソワ・オゾン監督)でも、わざと性的な魅力を隠したような
お固い女性を演じていたユザベル・ユペール。
しかし、ユザベル・ユペールが性的な魅力のある「女性」に変身すると、女の人ってこんなにも
変わるのか!と言わんばかりのセクシーさを見せつけます。

私がこの映画で感心したシーンは、ユザベル・ユペール扮するピアニストが、嫉妬のあまり
自分の教え子のコートに自分で割ったガラスのグラスを入れるシーンでした。

ユザベル・ユペールが会場を飛び出し、いったん画面に背中を向けて座り込むというシーンが
挿入され、まさにココがミヒャエル・ハネケ監督演出の真骨頂だと思うのですが、
ヒロインが次の行動をどうするのか考えるというシーンを丁寧に入れ込んでいるのです。

観客に「おや?彼女は一体何をしているのだろう?」と思わせておいて、次のシーンで
ヒロインがおもむろにガラスのグラスを割り始めるわけです。

ミヒャエル・ハネケ監督のドイツ語インタビューを日本語訳にしたものを一部だけ読んで
わかったのは、こだわり抜いた演出が画面に映し出されるまでには、監督自身が納得いくまで
かなりのリハーサルを徹底して行なっているということでした。

決して万人向けではなく、(一般的に観て)面白い作品でもない映画「ピアニスト」。
独特なミヒャエル・ハネケ監督ワールドが好きな人にはたまらない、かなりマニアックな映画でした。