ポルトガル出身の監督、ペドロ・コスタ(Pedro Costa)の作品「ヴァンダの部屋」を観たのは、かれこれ8年前のこと。
夜間の映画美学校に通っていた時に、学校からの案内でアテネフランセで上映があるので観に行くように言われたからでした。
「ヴァンダの部屋」は、ポルトガルの移民街(スラム)に住む人々の生活を描いたドキュメンタリー作品。
薄暗く、狭い部屋に住む女性、ヴァンダという女性を中心に描かれたこの作品。
監督を含めて少人数で、デジタルビデオカメラで撮影が行われたとの事でした。
オープニングから、ゴホゴホ、ゲヘゲヘと、大麻を吸引しては咳込むヴァンダの姿から始まるこの作品は、おセイジ抜きにして死ぬほど退屈な映画だったのを覚えています。
「ヴァンダの部屋」の上映後、この作品の編集に携わったという、女性編集マンのトークショーがありました。
その女性が語った言葉で印象的だったのが、「映画製作で大切なのは相性が合わない人とは仕事をしないことです」というコメントでした。
他の仕事ならまず考えられない言葉かもしれませんが、この言葉には驚きましたね、正直。
ただ、映像製作を続けていくうちに、段々とその言葉の意味がわかるようになりました。
役者さんとの相性、スタッフとの相性など、商業映画製作の現場なら我慢の二文字を貫かねばならないのでしょうが。
たまに役者さんも監督を最初からバカにしてかかる人もいます。
そういう役者さんに限って、名前が売れて人気のある監督の前では、おとなしいネコのごとく態度を変える傾向があります。
ある監督が話していましたが、役者も自分が売れるのに必死で、ある意味、監督や作品を踏み台にして、のし上がっていこうとするものだと。
だから、監督は監督として、役者に対してはお互いにのし上がっていくためにやっているんだからという気持ちで接しなくちゃダメなんですよ、と。
この監督、自主製作の時には役者さんにギャラなど払ったことがない(もちろん交通費も)との事でした。
その監督は自主製作から、今では日本を代表する名前が知られた監督になっています。
全面的に賛同はできない意見ではありますが、先に述べた相性の問題は、うなづけるものがありました。