STUDIO F+のPhoto Blog

デジタル映像スタジオSTUDIO F+の写真専門ブログです

映画「The Artist」(2011)

イメージ 1

アメリカの第84回アカデミー賞作品賞を受賞した、フランスが製作した映画
「The Artist」(2011)を観てきました。

この映画がモノクロでサイレント映画であるというのは、多くの人がすでにご存知だと思うので
内容も含めて、まずは観てのお楽しみにしておきましょう。

本作のミシェル・アザナヴィシウスはフランスで活躍する映画監督。
しかも、奥様は「The Artist」の主演女優ベレニス・ベジョペピー・ミラー役)。

この映画が製作されたのはフランス。
しかも主演をつとめる役者さん二人もフランス人。
ただ、描かれている時代は1920年代のアメリカ、ハリウッド。

つまり、アカデミー賞の本国アメリカで製作された映画ではないのにも関わらず
描かれている内容はサイレント時代のアメリカ映画という、少し不思議な感じがする映画。

ミシェル・アザナヴィシウス監督は本作の脚本を書き上げるため、サイレント映画をかなり
研究したらしく、「The Artist」の中に出てくるシーンにも、往年の名作映画のオマージュ
と思われるシーンが登場します。

私がこの映画で驚いたのは、ラストシーン。
(ネタバレはしませんのでご安心を)

この映画の評価が高いのは、観客がラストシーンを観て、映画のマジックに魅了されたからだろうと
思いました。まずは、観て頂けたらと思います。

と言うのも、本編で描かれている物語は単純そのもの。
映画を観ていて、途中退屈しそうになるくらいなんです。

しかもモノクロ、サイレント映画だから、お客はじーっと我慢して画面を見続けるしかないわけで
今のCGやら、ビジュアルエフェクト満載映画とは異なり、シンプルな色のついていない画面を
見続けるのは結構大変な気がしました。

しかし、そんな退屈感もラストシーンで一気に挽回してしまうのだから、この映画には
アカデミー賞を受賞しただけある「何か」がありました。

映画を見終わって、ジャン・デュジャルダン演じるジョージ・ヴァレンティンの口元のヒゲが
風と共に去りぬ」のクラーク・ゲーブルを思い出させたり、ペピー・ミラーを演じた
ベレニス・ベジョの目がとても美しいなぁと思ったり、唯一のコメディ役を演じる「犬」
アギーが可愛いなぁと思ったりしたのですが、サイレント映画の名作を作り続けたある映画俳優を
思い出していました。

それは、コメディー映画の王様、チャールズ・チャップリンでした。

前述したように、モノクロ、サイレント映画はお客に見続けさせるということを、ある意味
強制しなければならない面があるように感じました。

そのため、いかにお客を飽きさせず、楽しませる映画を製作するかを、サイレント映画
追求し、改良と発展を繰り返し、現在の「映画」という土台を作り上げたように思うのです。

チャップリンの映画は、ほとんど毎回、チャップリン自身がホームレスの役で登場し、
映画の中で独特なパントマイムをして見せてお客を笑わせます。

サイレント映画でお客を飽きさせない方法の一つがココにあるように思います。
役者の動きでお客の目を画面から離させない、そして、おどけた道化を演じて
お客を笑わせ、台詞がなくても役者のアクションだけで映画の世界にお客を巻き込んでいくという。

しかも、チャップリンのすごいところは、お客を笑わせて、最後には感動までさせてしまう点
なんです。

私の好きな映画にチャップリンの「街の灯」という映画があります。
この映画は私のベストムービーの一本です。

映画「The Artist」では唯一、犬のアギーが道化役を演じて、お客を魅了していましたが
ラストで展開するタップダンスに、映画がお客を魅了する「動き」のマジックを見たような
気がしました。