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松本清張(著)「潜在光景」

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最近は映画よりも本を読む回数の方が多くなっています。

大学時代には宮本輝などの著作をよく読んだ記憶があります。

今回の本、松本清張著作の短編集「潜在光景」も、前回のブログでも書いたとおり
日本の短編小説家の阿刀田高氏が愛した短編小説の中にあったもの。

私はある時期、私の映画の師匠と呼べる、大分の友人からすすめられて
松本清張を読んだ事がありました。

また、父親と一緒に、松本清張原作、野村芳太郎監督、橋本忍脚本の映画
砂の器」を観た事もありました。

個人的には、松本清張自身の生き方にも興味があり、ものすごい苦労を重ねるなか、
42歳で小説家として作家デビューを飾り、生涯にわたり学歴社会日本の矛盾と
闘った人物でもありました。

その松本清張が書き残した短編集「潜在光景」の中には、「鬼畜」や「八十通の遺書」など
が集録されており、どれも読み応えたっぷりの作品でした。

なかでも印象に残っているのが「黒い血の女」。

遺産をめぐる姉と妹の悲劇の話で、特に、遺産を独り占めしようと企み、
次々と色仕掛けで男を落としては、毒牙にかけていく姉の姿の凄まじさに
唖然としてしまうほど。

自分で殺した男の遺体を掘り返しては、他の場所に遺体を移しかえる
シーンなどは、女の爪から死臭が漂う、というくだりでゾゾゾーっと。
リアリティあり過ぎです。

松本清張作品全編とおして言えるのが、殺人の動機とその殺人を犯した人間の描写が
詳細にわたって表現されている点です。

特に、なぜ、その女は殺人を犯すにいたったのか?という動機部分は、実に人間らしい
最もな動機が隠されていたりして、読む者の好奇心を掴んで離しません。

同じく集録されていた「植木鉢を買う女」なぞは、男から相手にされないオールドミス
のOLがお金に執着をして、最後には殺人に手を染める話で、そのOLがなぜお金に
執着するのか、という動機が読んでいて納得させられてしまいます。

松本清張作品は数多くのテレビ化、映画化されていますが、やはり、映像ではなく
文章で語られるからこそ、松本ワールドはその真骨頂が出るのだと思います。

人間の弱く、悲しい性を殺人事件を通して描ききった、松本清張
ぜひ、一度読んでみてはいかがでしょうか。