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映画「風立ちぬ」

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宮崎駿監督作品「風立ちぬ」を観てきました。

ジブリ作品はもう観ないだろうと、「ゲド戦記」を観て思ったのですが、
「ポニョ」を興味本位で観て、さらには「アリエッティ」まで劇場に足を運んでしまったという。

今回の「風立ちぬ」を観に行ったのは、堀越二郎に興味があったわけでもなく、
零戦に興味があったわけでもなく。

原作を読んでいないので、物語の本筋は男女の悲哀を描いたものらしいと聞いただけ。

ただ、一番興味があったのは、大正、昭和初期という時代をアニメでどう描いているのか?
という事でした。

個人的には、ものすごく良くできた映画だと思いました。
宮崎アニメを映画館で観て、感動したのは「魔女の宅急便」以来かもしれません。

千と千尋」「もののけ姫」も感動こそはしないものの、宮崎駿監督の演出力に
驚かされた映画でした。

中学時代に「ナウシカ」&「ホームズ劇場版」を地元の映画館に11回も通った
経験がある私ですが、私の宮崎アニメの原点は「未来少年コナン」がダントツの
ナンバーワンです。

その次が「ナウシカ」であり「カリオストロの城」だったりします。
多くの人が支持している「ラピュタ」は、劇場公開当時、映画館に期待して観に行った
ものの、パズーがフツーの少年だったのにガッカリして帰った記憶があります。

今回の「風立ちぬ」、観た人で受け取り方が二分されているようで、
「つまらん!」と言う人もいれば、「面白かった!」と言う人もいて、
映画から受ける印象は、観た人の個々の中でずいぶんと違うものになるもんだと
改めて感じました。

私にとって映画「風立ちぬ」は、愛する人の命がもうあとわずかしかない
切羽詰まった中で、どう生きればいいのか?どう受け入れたらいいのか?
ということを痛切に感じさせられた映画でした。

しかも、時代は軍国主義に傾く日本や世界情勢を背景にしていて、
決して明るい話ではないにも関わらず、宮崎駿監督としては心血を注いで
制作した作品だと思います。

劇中ところどころに「夢」が交差し、飛行機を作る事は「美しいもの」を作りたい、
自分の夢を叶えたいという主人公の願望であることを強調してみせます。

決して人殺しの兵器となる戦闘機を作りたいわけじゃない。
この部分が恐らく、「風立ちぬ」を描く上で、宮崎監督が悩み苦しんだところだった
ように思えます。その結果、主人公の「夢」を何度も登場させる事に
つながっているのではないかと。

この映画を賛否両論真っ二つにしている原因の一つが、主人公の声が「エヴァ」の
監督の庵野秀明氏だったことらしいですが、私は最初は気になるかもと思いながらも
全く気にせずに観てしまいました。

キムタクが出演した「ハウル」でもそうだったのですが、宮崎監督の演出マジックに
かかると、どんな人でも(おっと失礼)、主人公にちゃんとなってしまうんだからスゴイ。

また、タバコのシーンにクレームをつけた団体もいるようですが、映画で描かれている
時代は、今の時代とは全く違うわけで、何を言っているやらです。

さらには、主人公の堀越二郎が無表情すぎるとか言うクレームあるようですが、
インテリ中のインテリだった堀越二郎は、ある意味、普通の人じゃないわけで、
ある種の変人(今で言う飛行機オタクのような感じ)でもあったように思います。

頭の良いインテリって、確かに自分の喜怒哀楽をあまり表現しないよなぁと。

ただ、自分の愛する妻が倒れた!と聞いたときに流す二郎の涙は、唯一、
喜怒哀楽がハッキリ出ているシーンでした。

おそらく、私がもっと若くて、高校生の時にこの映画を観たら、たぶん理解は
できなかったかもしれません。そのくらい「風立ちぬ」には、これまでの宮崎アニメ
にはない大人の愛情表現が出てきます。

しかし、よくよく考えて「カリオストロの城」のラストシーンを思い出してみると、
宮崎駿監督が男女の別れを強烈に描くことに関しては、天才的なものがあったのだと。

私にとって、強烈な印象と感動を残した映画「風立ちぬ」。
アニメでしか描けないであろう、日本の大正、昭和初期の時代、風情、風俗と、
当時の人々だったであろう姿。

ああ、日本人って礼儀作法が美しかったんだろうなぁ、とか、2013年では感じられない
ものがこの映画にはありました。

最後に、自分の命はあとわずかであるという事は、その寿命が消えかけている人には
実はわかっている。そんな個人的な実体験も重なって、映画を観ながら、
気がついたら泣いていた私でした。