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映画「裏切りのサーカス」(2011)

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原題「Tinker Tailor Soldier Spy」、原作は本物のMI6で働いた経験を持つ、ジョン・ル・カレの小説で、本作は彼の小説の中でもジョージ・スマイリーを主人公にしたシリーズのうちの一作。

監督はスウェーデン出身で「僕のエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソン

主演にゲイリー・オールドマンコリン・ファース他。

原題になっている「Tinker Tailor Soldier Spy」というタイトル、実はあのマザーグースの詩「Tinker, Tailor, Soldier, Sailor, Rich man, Poor man, Beggarman, Thief.」に因るものらしい。

内容は今回はネタバレギリギリに止めておきましょう。

この映画を最初に観た多くの観客と同じく、私も話の展開とキャラクターの名前を一致させることで四苦八苦し、一回目の感想としては、日本語訳された海外小説を読まされている感じをうけました。

ただし、所々のシーンにはかなり印象が残り、もう一度観て観たくなる作品ではありました。

つまりこの映画、あえて観客にわかりやすい説明的なシーンを省き、過去に起こった出来事なのか?現在の出来事なのか?を明確に見せないため、一回観ただけでは非常にわかりにくい映画なんです。

安っぽい表現を選ぶなら、過去はモノクロ風にしてみせたりもするのですが、この監督はあえてそれをしない。

それに複雑なストーリーが加わるため、観てる方は何が何やら…となってしまいがちなんです。

しかし、つまらない映画では決してなく、かなり良くできた映画なのがニクい。

ゲイリー・オールドマンらの演技はさることながら、お芝居が素晴らしいんです、この映画。

しかも、舞台は米ソ冷戦下のヨーロッパなため、画面に半端ない緊張感が溢れており、「007」などの娯楽スパイ映画がいかにファンタジー的なものであるか、比較にならないくらいリアリティがある本格的な「スパイ映画」でした。

ゲイリー・オールドマンがラスト近くに握りしめるピストルが、ワルサーPP系のものなのは、007からのオマージュなのか?はわかりませんが、時代背景を色こく残す音楽やファッションのチョイスも素晴らしい。

個人的に好きなシーンは、ゲイリー・オールドマンが「モグラ」と呼ばれるスパイを家の中で待ち構えるシーン。

おそらく当時の包装紙を再現したであろう、その紙にくるまれたキャンディーを破って、一つ口にゆっくり入れるゲイリー・オールドマンのシーンが印象深かったですね。

また、ラストの狙撃してからの涙のシーンも、男同士の悲哀を描いた名シーンとして後世に語り継がれることだと思います。

最後に、スペイン出身のアルベルト・イグレシアスが担当した音楽も良かったですね。彼はこれまでペドロ・アルモドバル監督作品を主に手がけた作曲家らしく、お決まりのハリウッド系作曲家にはないテイストを持ち込んでいました。

ラストにフリオ・イグレシアス演奏の「La Mer」(海:シャルル・トレネ)が軽快に、そして悲しく流れる「裏切りのサーカス」。重厚な映像美と合わせて、ぜひご覧ください。