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映画「ザ・タウン」(2011)

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1997年の映画「グッド・ウィル・ハンティング」で、友人であり俳優のマット・ディモンと一緒に出演し、アカデミー脚本賞を受賞した、ベン・アフレック監督、主演作品「ザ・タウン」(原題:The Town)を観ました。

原作はアメリカの小説家チャック・ホーガンの「強盗こそ、われらが宿命」。

最近では映画「アルゴ」でも、監督兼主演を務めているベン・アフレック

一時期は「アルマゲドン」やら「パールハーバー」などの大作映画の主演を務め、歌手のジェニファー・ロペスとの恋の噂話で持ちきりだったベン・アフレックでしたが、「グッド・ウィル・ハンティング」でみせた手腕を監督業でも発揮しています。

「ザ・タウン」を見て、私は古風なアメリカギャング映画の印象を受けました。

舞台は現代のアメリカ、ボストンのチャールズタウン。

本作に登場する「街」、チャールズタウンは、親から子へと銀行強盗という犯罪稼業が受け継がれていた負の歴史がある危険な街だったとのこと。

映画の物語は、この街の犯罪組織に属している若者たちのやり切れない怒りや暴力を描いた、悲哀あふれるラブストーリーでした。

冒頭シーンからいきなりの銀行強盗が始まり、防犯カメラの録画用ハードディスクをまとめてかっさらい、電子レンジに入れてオシャカにしたり、 漂白剤をまいて証拠になるDNAを消して逃げ去るなど、リアリズムに撤した演出を見せつけます。

しかも、犯罪組織の元締めが「花屋」を経営している、くたびれた爺さんだったりと、ノンフィクションっぽい作り込みに、思わず唸ってしまうほど。

ちなみに、この「花屋」の爺さん役を演じているのは、本作が遺作となったイギリスの俳優ピート・ポスルスウェイト(「ユージュアルサスペクツ」等に出演)でした。

その他の脇を固める俳優陣も、「ハートロッカー」で注目されたジェレミー・レナーや、「アダプテーション」でアカデミー助演男優賞を受賞したクリス・クーパーらが出演し、濃厚な人間ドラマをみせます。

ただ、個人的にはこの映画の後半部分にかなり無理があるなぁと感じました。

FBIがすでに銀行強盗団の一味の顔写真を入手しているにも関わらず、次の銀行強盗を見過ごしてしまったり、肝心なところで物語の迫真性が薄れてしまっていました。

しかも、ラスト近くの銃撃戦シーン。
私が推測するのに、公開前のスニークプレビューの観客の感想などでラストを変えたような気がしています。

(ネタバレありです)

弟分であるジェームズ・コグリン(ジェレミー・レナー)が警官に囲まれて銃撃戦になり、それを傍らで傍観視しているだけの主人公のダグ・マクレイ(ベン・アフレック)。

これが日本の任侠映画だったら…
間違いなくわが身を捨てて、弟分を助けにいったのではないか。

あのタランティーノ監督の「パルプ・フィクション」でも、ブルース・ウィリスは自分を殺しにきた黒人の親分を(なぜか日本刀を持って)助けに行ったわけで(笑)、「仁義」という発想が演出家にあれば、「ザ・タウン」のようなモヤモヤしたラストシーンにはならなかったのではないかと思いました。

前半の張り詰めたリアリズムが、後半のラブストーリー重視の姿勢をみせた途端、なんとも男気のない映画になっていました…

しかし、脚本の妙義と言うか、男女の悲しい別れのシーンは見事だったと思います。

主人公ダグが恋人のクレア(レベッカ・ホール)と別れの会話を窓越しにしているシーンで、物語のキーとなる「こんな晴れた日に…」というセリフが出て、本当は死んで欲しくない生きていて欲しい、というダグを想う恋人の気持ちが出ていてジーンときました。

他のレビューなどを見ると、かなりの高評価だったりする、ベン・アフレック監督作「ザ・タウン」。

果たしてラストをどう感じるかで、評価が真っ二つにわかれる作品だと思いました。