STUDIO F+のPhoto Blog

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メアリーブレア展

現在、STUDIO F+で製作中の最新作、短編SF映画「サイレント・プラネット」の作曲を依頼していた友人から完成した音楽を頂き、映像と音楽のドッキング作業のため、毎日昼夜逆転の生活を送っています。

そんな中、唯一息抜きができたのが、現代東京美術館で開催されているメアリーブレア展に行った事でした。

メアリーブレアとはアメリカのディズニースタジオでアニメーション作品のコンセプトアートを手掛けた女性です。

メアリーブレアがディズニーで手掛けた作品で有名なのは、不思議な国のアリス、ピーター・パン、シンデレラなどがあり、晩年にはディズニーランドにあるIt's a small world のデザインも手掛けています。

個人的に興味があったのは、やはりメアリーブレアが描いたコンセプトアートの世界でした。

展示場の宣伝文句に、「あのウォルト・ディズニーも愛したメアリーブレアの色彩」(確かこんな感じ)とあるように、メアリーの描いたアートの世界は色彩、色調で、ある場面(シーン)を明確に表現しているのです。

つまり、悲しい場面には観客に悲しいと感じさせる色調で全体を表現し、ロマンチックな場面にはロマンを感じさせる色調で描いて見せているのでした。

展示場で上映されていたメアリーブレアを紹介するビデオの中で、ピクサーアニメーションの監督が次のように語っていました。

「メアリーが描いたシンデレラのワンシーンのコンセプトアート(召し使いの姿のシンデレラが鏡の前で、バラの花を髪にさして鏡を見ているというシーン)から、このコンセプトアートを見るだけで、すぐにシンデレラの悲しい感情が伝わってきて、悲しい場面なんだとわかってしまうんだ」
(確かこんな感じの事を言ってた)

色で場面を表現する。凄い発想だと思いました。絵画をやっていたり、カラーコーディネーターをやっている人からすると当たり前の事かもしれません。映画の世界で言えば、照明やカラーコレクションなどがこれにあたるのでしょう。

あらためてメアリーの描いた世界を見ると、色彩で人、自然のその時の様子を表現してみせるというのは、簡単に見えて実は非常に繊細な感性がないと表現が難しいという事に気がつきました。

私の今後の作品作りに取り入れていきたいと思いました。

最後に感じたのは、アメリカではアニメもちゃんとしたアートであると認めているところが素晴らしいと感じました。かなり前に、六本木ヒルズ内の森美術館ピクサー展をやっているのを見に行った時も、ピクサーのアニメーターたちは自分達の事を「アーティスト」であるとハッキリと明言していたのを覚えています。

僕らはただ商売のためにアニメを作っているんじゃない、立派な芸術作品を作っているんだ、という自負をピクサー展で感じたのでした。

これと全く同じ事を、今回のメアリーブレア展でも感じました。

ひるがえって、日本ではスタジオジブリが、アニメの地位向上にかなり努力しているのがうかがえます。今だからこそ、日本のアニメが世界で注目を浴び、実写映画を抜いて断トツのビジネス(金儲けになる商品)になってきたことに、当て込んだ投資家連中が騒ぎだし、また、広告収入が減り映画興行で一山当てたいテレビ局(日テレ、フジなど)がこぞってアニメに漫画に注目をしているようですが、日本ではまだアニメや実写映画はビジネスの道具でしか見られていないような気がします。

なぜか、大学までが漫画やアニメーション学科を新設して、客寄せパンダとしてアニメ、漫画を取り沙汰している始末。(ビジネスのうま味が期待できない実写映画にはあまり注目するところがない)

日本はなんでも儲かるものに飛び付いて、使えるだけ使ったらオハライ箱行きなのだから、エコノミックアニマル精神を早く捨てて、持っと文化、芸術を大切にする教育、社会環境を整えるべきだと思いました。