最近、1960年代から70年代にかけての日本映画をよく観ています。
前述した勅使河原監督作品も「おとし穴」を再び観たり、勝新太郎とタッグを組んだ映画
「燃えつきた地図」も観ました。これらの感想はまた後日掲載します。
さて、今回取り上げる映画は吉田喜重監督の作品「日本脱出」(1964年)です。
この映画を観る前に、同じく吉田監督の「煉獄エロイカ」(1970年)も観ました。
松竹ヌーベルヴァーグの旗手と言われた吉田監督が、この映画のラストシーンを無断でカット
されたことに怒って松竹を去ったという「いわく」付きの映画がこの作品です。
吉田監督が描いていたラストとは、主人公が発狂するシーンだったようですね。
演技を見せてくれる役者さんばかり。
とりわけ、運が悪いダメ男である主人公を演じる鈴木ヤスシの演技は、凄まじいハイテンション。
シリアスなシーンなのに思わず笑いがこみ上げてきます。
私がこの映画を観ようとした切っ掛けは、この映画のタイトルに惹かれたからなんです。
ところがこの映画、「日本脱出」どころか「やっぱり日本に住みたい」と途中で主人公に
言わせてしまうなど、映画の内容は最初から混乱しっぱなし。
吉田喜重監督って、そんなに演出が上手くないんじゃない?と思ってしまうほど。
松竹がラストをカットしたせいもあってか最後のシーンは、主人公が宙ぶらりん状態で終わり、
この映画の最初と最後をシメるのは、なんと!日本が生んだ芸術家、岡本太郎先生なんです。
吉田監督曰く、オープニングに岡本太郎先生が画面に向かってバシッと絵を書きなぐるシーンは
フランスのアラン・レネ監督作品からの模倣だそうです。
飛行機が韓国までしか飛ばないとわかると再び女を連れて山に逃げてみたり、女がいなくなると
裏切られた!とオリンピック聖歌ランナーを実況放送する車をカージャックしたり・・・
とにかく無茶苦茶なんです、この映画。
とりわけ、オープニングに流れるバリバリの日本語英語の歌がこっ恥ずかしく流れ、冒頭に登場する
アクション映画を作ったつもりの吉田監督なんですが、どう観てもアクション映画にはみえない
「日本脱出」。
注目して欲しい。いまどきの日本映画ではとてもお目にかかれないテンションだと思います。
タイトルとポスターのビジュアルに惹かれて観ると、まるで違う映画だったという、
二重の驚きがあなたを待っていますゾ。