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愛、アムール(2012年)ミヒャエル・ハネケ監督作品

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最近、映画の記事を書かずじまいだったので、ひさびさに映画の記事を一つ。

ようやく見ました。

監督は2009年に「白いリボン」でパルム・ドールを受賞し、今回で二度目の
受賞となる、オーストリアの監督、ミヒャエル・ハネケ

本作「愛、アムール」は、年老いた夫婦の介護問題を描いた作品。

主演の夫役ジョルジュに「暗殺の森」のジャン=ルイ・トランティニャン
妻役アンヌにアラン・レネ監督作品「二十四時間の情事」に出演したエマニュエル・リヴァ

高齢化社会を迎えた日本社会でも、この作品と同じような出来事や事件が
ニュースになっており、老人介護の問題は国内外問わず抱えた問題と
なっていることがわかります。

私がこの映画を観る前に思ったのは、はたして「老人介護の問題」が
映画の題材として扱われた場合、どんな作品に仕上がるのだろうか?
ということでした。

NHKスペシャルなどでも、すでに老人介護問題は扱われている内容でもあり、
わざわざ映画化する必要性があまり見当たらないと感じたからでもあり、
ドキュメンタリー映画でも十分なのではないかと思ったからです。

しかしながら、さすがは問題作ばかりを世に問う映画監督、ミヒャエル・ハネケです。
オープニングから観客を映画の世界に引きこんで行く手腕はさすがですね。

ネタバレは極力しないようにしますが(笑)

映画として現実にある深刻な問題を描く場合、映画の持つ娯楽性という一面が
失われてしまい、ただただおも~い、くら~い映画になるパターンが多いのですが、
時系列をズラして、結果をポン!と冒頭に持ってきて、なぜ?こんな事になったのか?
というナゾを観客に提示し、その後もクドクド説明をせずに映画を進めていく演出なため、
観客は映画の物語に引き込まれていく仕掛けになっています。

これは、私が勝手に名づけた「ハネケ流演出術」という手法です。

過去のハネケ監督作品「隠された記憶」や「白いリボン」でも、
似たような演出が行われています。

ナゾを提示し、なぜ?どうして?と展開し、最後には決まって
結末(ナゾの答え)を明確に提示しないまま物語が終わっていく。

このため観客は映画を見終わったあとも、ずーっと「ナゾ」についての明確な
解答が与えられないまま、映画を引きずっていき、結果的に映画を何度も見て
しまうことに陥るという。

このハネケ流演出術、観客にとっては好き嫌いがわかれるかと思います。

今回の「愛、アムール」という作品の一番の見どころは、やはり、
老夫婦を演じた、ジャン=ルイ・トランティニャンエマニュエル・リヴァの演技でしょう。

日本版の「愛、アムール」の公式サイトに、エマニュエル・リヴァのインタビュー映像が
掲載されており、それによると、ハネケ監督から演技指導はほとんどなく、
役について繰り返し何度も練習させられることにより、深みのある本物の役を
演じることができたと語っていました。

かなり細かいと言われているハネケ監督ですが、ハネケ本人が手がける脚本には、
詳細な描写などが全て記載されていたとの事で、お芝居の要求が細かいという
わけではないらしいですね。

次のカットにどんなカットがつながっているのか、観客にまったく予測させない
計算された編集に仕上げるのも、ハネケ流演出術の一つ。

好き嫌いがわかれるかとは思いますが、ぜひ、一度見てみてはいかがでしょう?

愛、アムール」公式HP

さてさて、私は再び、STUDIO F+の新作ショートフィルム製作を進めることにします。

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