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映画評:『ハリウッド監督学入門』

映画評:『ハリウッド監督学入門』

Jホラーブームの元祖「リング」シリーズの監督
中田秀夫

中田監督がハリウッドで自身の「リング2」を
リメイクした経験をもとに描いたドキュメンタリー
映画がこの『ハリウッド監督学入門』です。

このドキュメンタリー作品は、全編中田監督による
ホーム・ムービー的な映像で描かれています。

見所としては、最近のハリウッド映画音楽を
支えている作曲家ハンス・ジマーなどの
大御所のインタビューが記録されているところです。

また、ハリウッドと日本での映画製作の違いが
明確に指摘されており、中田監督自身、三年間も
ハリウッドにいながら、結局、「リング2」の
一本しか監督できなかったイラ立ちが画面に
あらわれていました。

ハリウッド映画製作にはあって、日本映画製作に
ないものをおおまかに言うと、①カヴァレージ
②テスト上映、という2点があります。

①カヴァレージとは、ワンシーンを複数のアングル
で撮影することで、編集時に選択肢を多く
残しておくことになります。

②テスト上映とは、完成した映画を不特定の観客に
本上映の前にタイトルを隠して観てもらい、
上映後にアンケートをとり、意見を聞くことです。

中田監督だけでなく、ハリウッドで映画がリメイク
された周防監督も自身の書いた本で、ハリウッドと
日本の違いを述べています。

日本では確かなキャリアを持つ中田監督でも、
ハリウッドでは新人監督と同じような扱いを
受けたようで、もし、「リング2」が大ヒットの
目安とされる1億ドル以上の興業収益を獲得して
いたら、次回作はスムーズに作れたのかもしれない
と振り返っていたのが印象深かったです。

リメイクするはずだった「The Eye」は、結局
途中で頓挫。その後、中田監督は日本に帰国し
ハリウッドの経験を活かして「怪談」と「L」を
監督することになります。

自信満々な中田監督とは裏腹に「怪談」「L」の
両作品とも、日本で大ヒットしたかというと、
それは疑問ですが、「若いうちにハリウッドで
映画製作を学んだ方がいい」と言う中田監督。

完璧なまでに映画をビジネスとしてとらえている
ハリウッド。

世界に市場を持つハリウッド映画が故に、映画を
消費者にウケる商品として扱わないといけない
とする姿勢は、学ぶべき点もあり、果たして
それでいいのか?という疑問も出てきます。

いずれは、私も再びアメリカに戻り、ハリウッド式
映画製作を体験したいと思っています。

『ハリウッド監督学入門』
監督 中田秀夫
出演 中田秀夫 ロイ・リー ウォルター・パークス 一瀬隆重 清水崇 ハンス・ジマー